父の名

父の亡き後

役所などで父の名を

たくさん書いた



達筆だった父は

よく私に言った

「字は丁寧に書きなさい」



普段の私の字は

自分でも読めないことがある



だがこの時は

ペンを握る手がスーッと運ばれ

一本通った落ち着いた字であった



90年呼ばれてきた父の名

父がずっと書いてきた名

もう書かれることもなくなる名



戸籍謄本をあらためて見れば

私の出生届出人に「父」とある



父の出生届出人もまた「父」



どんな思いで

父や祖父は子の名を書いただろう



死亡届けの用紙を前に

代々の父想う






コメントを残す