三本の鍵

家財処分の前日

もぬけの殻となった家での宝探し




私が持ち帰ったもの・・・



ハナおばあちゃんと

おせち料理を囲んだ写真



ウタおばあちゃんが

糸を巻いて作った手鞠



お父さんに作ってあげた

シルバークレイのループタイ



お母さんが作ってくれた

ピアノの発表会の小さなドレス




業者が五日かけて家財を分別し処分

長年家族と共にあった家具が

すっかり消えた




三十年食事したダイニングテーブルも



父が座っていた黄色いソファーも



年季の入った料理や手芸の道具も



母と一緒に選んだ鏡台も



ウタおばあちゃんの着物も



犬のとめ太郎のかじり跡が残った引き出しも




三ヶ月前までは

家族三人が揃っていた



「ただいま」と帰っていた

共通の家はもうない



空っぽになった部屋に

「ありがとう」と言って

三本の鍵を管理人に返却した












“三本の鍵” への2件のフィードバック

  1. 一つ一つ家族の証を心に刻んでいる華伊さんの横に立って、同じ光景を見ているような気持ちになりました。
    華伊さんの大切な想い。お父さんやお母さんへの愛情が伝わってきます。

    いいね

コメントを残す