徘徊

交番から身元引き受け要請

連日三日目の夜



十数回の長い着信バイブや

数時間おきのノックに気付いていたが



部屋中の灯りを消し

息を潜めていた




警察の迷惑を知りながら

母の淋しさを知りながら


外出着のまま横になり

初めての引き受け放棄




夢うつつの中

着信バイブやノックが

けたたましく襲う




翌早朝 出勤前に交番に行くと

「連日業務に手を取られ迷惑だ」


厳重注意されながら事情聴取



「近くに身内は?」

「私しかいません」

何度聞かれても

いないもんはいない




母の見守りと

すぐに連絡が取れるよう

念を押される




昨晩 警察署に搬送され

夜を明かした母が

何食わぬ顔で

警官に支えられながら

交番に戻ってきた




手を差し出す気にもなれず

ゆっくり歩く母を

先で待ちながら

母を独居宅へ送り届けた



仕事に行かなければと

すぐにまた引き返し

駅で電車を待っていると着信



電話の向こうから

苛立ちを抑えた声



「またお母さんが来ています

今すぐ迎えに来てください」



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